歴史

「○○富士」はなぜ生まれたのか——見立てと信仰が広げた、ふるさとの山

津軽富士、讃岐富士、薩摩富士——全国に300とも400ともいわれる「○○富士」。その数は今も確定せず、最も低い富士は標高35メートルしかない。形の似た独立峰に富士の名を重ねてきた、信仰と郷愁の歴史をたどる。
技術

トンネルはどうやって掘るのか——山岳・都市・海底、三つの掘り方

山を貫く新幹線も、都市の地下鉄も、海底をくぐる青函トンネルも、掘り方はまるで違う。爆破した岩盤そのものに支えさせるNATM、フナクイムシをまねて壁を組み立てながら進むシールド、そして陸上で作って海に沈める沈埋工法。三つの発想の違いと、青函トンネルが海底なのに「山岳工法」で掘られた理由をたどる。
言葉

「敬語」はなぜ三種類では説明しきれないのか——尊敬・謙譲・丁寧と、文化庁が分けた五つ

学校で習う敬語は尊敬語・謙譲語・丁寧語の三種類。けれど文化庁が2007年にまとめた「敬語の指針」は、これを尊敬語・謙譲語Ⅰ・謙譲語Ⅱ・丁寧語・美化語の五つに分け直しています。「伺う」と「参る」はどちらも謙譲語なのに、何が違うのか。敬語が三つに収まらない理由と、神への言葉から相互尊重へと性格を変えてきた歴史をたどります。
歴史

活版印刷はなぜ世界を変えたのか——グーテンベルクと情報革命の構造

活版印刷を発明したのはグーテンベルク、と習う。だが活字を組んで刷る発想は東アジアが数百年早く、金属活字の現存最古は1377年の朝鮮『直指』だった。ではなぜ「世界を変えた」物語の主役はマインツの金細工師なのか。刷る言語の構造、普及の速度、宗教改革という最初のメディア・イベント、そして都市の成長まで、技術が社会を動かした仕組みをたどる。
科学

なぜ鉄は錆びるのか——表面でひそかに働く小さな電池

鉄の錆は外から付いた汚れではなく、鉄そのものが電子を手放して酸化鉄に変わった姿です。アノードとカソードに分かれた小さな電池が表面で働く電気化学反応として、赤錆と黒錆の違い、トタンやブリキ、船やパイプラインの犠牲防食、そして鉄が鉱石(酸化鉄)へ戻っていく過程までをたどります。
歴史

ペストはなぜヨーロッパを変えたのか——黒死病後に動いた賃金と信仰

黒死病は人口の激減を通じて中世ヨーロッパに何をもたらしたのか。労働力不足が農民の賃金を押し上げ、1351年の労働者規制令も止められなかった。一方で教会は無力をさらし、鞭打ち苦行やユダヤ人迫害も広がる。ペストが「変えた」ものと、すでに始まっていた変化とを、史料の論争もふくめてたどる。
歴史

なぜ地図は「北が上」なのか——方位の標準化と、そうでない地図の歴史

地図の北が上なのを私たちは当たり前と思っていますが、国土地理院でさえ「確たる定説はない」としています。中世ヨーロッパでは東が上、イスラム圏では南が上。方位が北へそろっていった歴史と、いまも残る「逆さ地図」をたどります。
歴史

兵庫県はなぜ五つの国からできているのか——摂津・播磨・但馬・丹波・淡路と、神戸を分ける国境

神戸市は一つの市でありながら、須磨と垂水のあいだで摂津国と播磨国に分かれている。その境は古代の大化の改新までさかのぼり、いまも区境に残る。さらに兵庫県は摂津・播磨・但馬・丹波・淡路という五国の寄せ集め——歴史も風土も違う土地が一県になった理由は、神戸港にあった。
歴史

西国街道とは何だったのか——山陽道の別名と、国道2号に重なる神戸・兵庫の道

神戸の街なかを貫く国道2号は、その多くが江戸時代の西国街道と重なっている。古代の山陽道を引き継いだこの脇街道は、名前すら一定しない不思議な道だった。兵庫津では繁栄ゆえに直角に折れ曲がる。神戸・兵庫を通った西国街道の来歴をたどる。
言葉

句読点はいつ生まれたのか——「、」と「。」が日本語に根づくまで

「、」と「。」は、いつから日本語にあったのか。古典の写本に句読点はなく、現行の打ち方は西洋の句読法を下敷きに明治以降広まった。明治三十九年の「句読法案」、戦後の横書きコンマ、令和の改訂までをたどると、読点には今なお唯一の正解がないことが見えてくる。