化学

科学

なぜ薬は効くのか——受容体という見えない相手と、魔法の弾丸

飲み込んだ錠剤の成分は血液で全身をめぐるのに、薬はちゃんと効くべき場所で働く。なぜか。受容体という相手にくっつくこと、その結合が鍵と鍵穴のように形で決まること、そして自分は傷つけず病気だけを狙う「選択毒性」という難題。エールリヒの魔法の弾丸から、いまだ残る抗がん剤の副作用まで、薬が効く仕組みをたどる。
科学

なぜ鉄は錆びるのか——表面でひそかに働く小さな電池

鉄の錆は外から付いた汚れではなく、鉄そのものが電子を手放して酸化鉄に変わった姿です。アノードとカソードに分かれた小さな電池が表面で働く電気化学反応として、赤錆と黒錆の違い、トタンやブリキ、船やパイプラインの犠牲防食、そして鉄が鉱石(酸化鉄)へ戻っていく過程までをたどります。
技術

半導体はなぜ「半」導体なのか——導体と絶縁体の「あいだ」が世界を動かす

半導体の「半」は、電気を半分しか通さないという意味ではありません。電気をよく通す導体と、ほとんど通さない絶縁体の「あいだ」にいる、という位置の話です。そのどっちつかずの性質こそが、スイッチにも増幅器にもなる。バンドギャップ、ドーピング、そしてなぜシリコンばかりが使われるのかをたどります。
科学

化石はなぜ残るのか——速く埋もれた骨だけが、石になる

何億年も前の生き物の姿を、私たちは化石で知ります。でも、死んだ生き物のほとんどは化石にならず、跡形もなく消えていきます。残るかどうかを分けるのは、死んだ直後の数日でした。速い埋没で腐敗を止め、地下水の鉱物が骨に染み込んで石に置き換わる——その条件を、化石化の仕組み、軟体部まで残る奇跡の地層ラーゲルシュテッテン、そして化石記録そのものの偏り(タフォノミー)からたどります。
技術

コンクリートはなぜ1000年もつのか——欠陥とされた石灰の粒が、ひびをふさぐ

古代ローマのコンクリートは2,000年経っても崩れず、海中の防波堤はむしろ強くなっています。一方、現代の鉄筋コンクリートの寿命は50〜100年ほど。この差はどこから来るのでしょうか。長く欠陥と見られてきた「石灰の白い粒」が、じつはひびを自分でふさぐ自己修復の鍵だった——2023年のMITの研究を入り口に、海水が育てる鉱物、現代コンクリートが鉄筋とともに朽ちる仕組み、そして速さと寿命のトレードオフまでをたどります。
科学

燃料電池と電池は何が違うのか——「ためる」電池と、燃料を「もらい続ける」発電装置

「燃料電池」は充電できない電池で、燃やさない燃料を使う。名前が二重に奇妙なこの装置の正体は、反応する物質を中に抱えた普通の電池と違い、燃料を外から受け取り続ける「開いた発電装置」にある。1839年に弁護士が見つけ、アポロでは飛行士が副産物の水を飲み、いまは家庭のエネファームで湯まで沸かしている。