歴史

なぜ時計の針は右回りなのか——日時計と北半球が決めた方向

時計の針が右回りなのは物理法則ではなく、北半球の日時計の影が右へ回るのを機械式時計が受け継いだためです。フィレンツェやプラハには反時計回りの時計も残り、向きが一つの約束事にすぎないことを示しています。
歴史

シルクロードとは何だったのか——「道」ではなくネットワークだった交易路

ラクダの隊商が絹を積んで中国からローマへ——そんな一本道のイメージで語られがちなシルクロード。けれど「シルクロード」という名前自体が19世紀ドイツの命名で、実態は無数の経路が網の目状に絡む交易ネットワークだった。だれも端から端まで歩いていない中継交易、ソグド商人、運ばれたのは絹より思想だったという近年の見直しまで、名前と実態のずれをたどる。
言葉

漢字にも方言がある——「垳」という文字が教える、土地と文字の関係

埼玉県八潮市にしかない一字「垳」。土へんに「行」と書いて「がけ」と読む。字源には二つの説があり、低地の水害の記憶が刻まれている。区画整理で消えかけたこの地名を救ったのは、よその土地の人だった。一字をたどると、文字と土地の思いがけず深い関わりが見えてくる。
科学

なぜ薬は効くのか——受容体という見えない相手と、魔法の弾丸

飲み込んだ錠剤の成分は血液で全身をめぐるのに、薬はちゃんと効くべき場所で働く。なぜか。受容体という相手にくっつくこと、その結合が鍵と鍵穴のように形で決まること、そして自分は傷つけず病気だけを狙う「選択毒性」という難題。エールリヒの魔法の弾丸から、いまだ残る抗がん剤の副作用まで、薬が効く仕組みをたどる。
歴史

「○○富士」はなぜ生まれたのか——見立てと信仰が広げた、ふるさとの山

津軽富士、讃岐富士、薩摩富士——全国に300とも400ともいわれる「○○富士」。その数は今も確定せず、最も低い富士は標高35メートルしかない。形の似た独立峰に富士の名を重ねてきた、信仰と郷愁の歴史をたどる。
技術

トンネルはどうやって掘るのか——山岳・都市・海底、三つの掘り方

山を貫く新幹線も、都市の地下鉄も、海底をくぐる青函トンネルも、掘り方はまるで違う。爆破した岩盤そのものに支えさせるNATM、フナクイムシをまねて壁を組み立てながら進むシールド、そして陸上で作って海に沈める沈埋工法。三つの発想の違いと、青函トンネルが海底なのに「山岳工法」で掘られた理由をたどる。
言葉

「敬語」はなぜ三種類では説明しきれないのか——尊敬・謙譲・丁寧と、文化庁が分けた五つ

学校で習う敬語は尊敬語・謙譲語・丁寧語の三種類。けれど文化庁が2007年にまとめた「敬語の指針」は、これを尊敬語・謙譲語Ⅰ・謙譲語Ⅱ・丁寧語・美化語の五つに分け直しています。「伺う」と「参る」はどちらも謙譲語なのに、何が違うのか。敬語が三つに収まらない理由と、神への言葉から相互尊重へと性格を変えてきた歴史をたどります。
歴史

活版印刷はなぜ世界を変えたのか——グーテンベルクと情報革命の構造

活版印刷を発明したのはグーテンベルク、と習う。だが活字を組んで刷る発想は東アジアが数百年早く、金属活字の現存最古は1377年の朝鮮『直指』だった。ではなぜ「世界を変えた」物語の主役はマインツの金細工師なのか。刷る言語の構造、普及の速度、宗教改革という最初のメディア・イベント、そして都市の成長まで、技術が社会を動かした仕組みをたどる。
科学

なぜ鉄は錆びるのか——表面でひそかに働く小さな電池

鉄の錆は外から付いた汚れではなく、鉄そのものが電子を手放して酸化鉄に変わった姿です。アノードとカソードに分かれた小さな電池が表面で働く電気化学反応として、赤錆と黒錆の違い、トタンやブリキ、船やパイプラインの犠牲防食、そして鉄が鉱石(酸化鉄)へ戻っていく過程までをたどります。
歴史

ペストはなぜヨーロッパを変えたのか——黒死病後に動いた賃金と信仰

黒死病は人口の激減を通じて中世ヨーロッパに何をもたらしたのか。労働力不足が農民の賃金を押し上げ、1351年の労働者規制令も止められなかった。一方で教会は無力をさらし、鞭打ち苦行やユダヤ人迫害も広がる。ペストが「変えた」ものと、すでに始まっていた変化とを、史料の論争もふくめてたどる。