文化史

科学

なぜ人は音楽に感動するのか——次の音を待つ脳と、当たりすぎない快感

音楽は食べられず、身も守りません。それでも鳥肌が立ち、涙が出ます。脳を測ってみると、ドーパミンは音が鳴るより先に出ていました。予測と裏切りのつり合い、快感を消す薬の実験、そして音楽だけ楽しめない人たちの脳から、この不思議な報酬の正体をたどります。
言葉

翻訳はなぜ難しいのか——等価という幻想と、訳し直され続ける言葉

翻訳アプリで用は足りるのに、翻訳者は「訳せない」と言います。難しさの正体は語彙ではなく、言語ごとに違う「言わねばならないこと」にあります。等価という前提が崩れるところから、明治日本が作った翻訳語、機械翻訳がまだ越えていない線までをたどります。
歴史

江戸の都市インフラはなぜ高度だったのか——水と循環と火消の町

18世紀の江戸は人口100万人、当時世界最大級の都市でした。それを支えたのが、高低差の乏しい土地に引いた上水道、し尿さえ資源にした徹底したリサイクル、そして大火とたたかう火消の仕組みです。三つのインフラから江戸の都市力をたどりつつ、「循環型社会」と美化しすぎない目でその光と影を見ます。
言葉

アルファベットはどこから来たのか——牛の頭からはじまった26文字

いま使うA〜Zの26文字は、たった一つの発明にさかのぼれます。エジプトの絵文字を借りて子音記号を作った古代セム人、母音を足したギリシア人、字を並べ替えたローマ人。Aがもともと牛の頭だった話から、&が「27番目の文字」だった話まで、アルファベット3000年余りの旅をたどります。
歴史

オリンピックはなぜ4年ごとなのか——古代ギリシャの暦が決めた周期を、近代がなぞった

オリンピックが4年に1度なのは、テレビ放送の都合でも競技の準備期間でもありません。答えは2800年ほど前のギリシャにさかのぼり、月の暦と太陽の暦のつじつま合わせから生まれた周期でした。しかもその4年は「オリンピアード」という時計として、歴史を数える単位にもなりました。古代の暦のリズムを、近代があえてなぞった経緯をたどります。
言葉

「標準語」はいつ生まれたのか——方言と共通語のあいだ

わたしたちがふだん「標準語」と呼ぶ言葉は、それほど古いものではありません。明治の国づくりのなかで、東京の教養層の話し方を手本に人工的に整えられたものでした。上田万年の主張から、方言を札で罰した時代、そして戦後に「共通語」へと呼び名が変わるまで。標準語という言葉が生まれ、やがて避けられていく経緯をたどります。
言葉

「〜的」はいつから日本語に入ったのか——明治の翻訳語が変えた語感

「科学的」「経済的」「個人的」——日常にあふれる「〜的」は、明治の翻訳語として広まった接尾辞でした。英語の形容詞語尾に音の近い漢字1字を当て、西周が使い始め、1881年の『哲学字彙』を機に学術語として定着していきます。当初は硬く嫌われもしたこの1字が、やがて「私的には」と若者言葉になるまでの来歴をたどります。
言葉

送り仮名はなぜ揺れるのか——「行う」か「行なう」か、100年の試行錯誤

「行う」と「行なう」、どちらも誤りではありません。この揺れは気まぐれではなく、100年以上の国語施策が積み重ねた結果です。少なく送った戦前、送りすぎを批判された昭和34年の告示、そして昭和48年に「本則」と「許容」という2層構造が生まれるまで。送り仮名の統一をめぐる試行錯誤と、それでも揺れが消えない理由をたどります。
言葉

「東西南北」はなぜその順番なのか——方位語の起源と世界の違い

「東西南北」と一息に唱えるあの順番は、世界共通ではありません。英語は北から時計回りに数え、麻雀の牌は東南西北。そもそも「みなみ」「きた」の語源は、辞書を引いても説が割れて定まっていない。方位を言い表す順番と言葉の由来から、それぞれの文化が何を基準に世界を眺めてきたかをたどります。
歴史

コーヒーはなぜ世界飲料になったのか——伝播・禁止・近代化の軌跡

コーヒーは広まるそばから何度も禁じられました。メッカでは異端の飲み物として弾圧され、ヨーロッパでは「悪魔の飲み物」と疑われ、ロンドンでは国王が店を閉じさせようとしています。エチオピアの1本の低木の実が、禁止と復活を繰り返しながら国際商品になるまで。為政者が本当に恐れたのは豆ではなく、人が集まる場所のほうでした。