科学

燃料電池と電池は何が違うのか——「ためる」電池と、燃料を「もらい続ける」発電装置

「燃料電池」は充電できない電池で、燃やさない燃料を使う。名前が二重に奇妙なこの装置の正体は、反応する物質を中に抱えた普通の電池と違い、燃料を外から受け取り続ける「開いた発電装置」にある。1839年に弁護士が見つけ、アポロでは飛行士が副産物の水を飲み、いまは家庭のエネファームで湯まで沸かしている。
言葉

旧国名はなぜ今も生き残っているのか——法令で消えなかった名前と、県境とずれる国のかたち

「信州そば」「伊予柑」「薩摩芋」——どれも明治に役割を終えたはずの旧国名を冠している。けれど令制国は、実は法令で廃止されたことが一度もない。廃藩置県で消えたのは藩であって国ではなかった。名前がしぶとく残る理由と、今の県境からはみ出す旧国境のずれをたどる。
科学

惑星の色はどう決まるのか——空の青、火星の赤、取り違えられた氷惑星の青

「青い地球」「赤い火星」「濃紺の海王星」——惑星の色は何で決まるのか。大気の散乱、水や鉱物による吸収、メタンとヘイズという複数の要因から太陽系の色をたどると、あの深い海王星の青が半ば画像処理の産物だったという近年の発見にも行き着く。
科学

音速の壁はなぜ「壁」だったのか——たとえが生んだ言葉と、遷音速の三つの難所

「音速の壁」は実在の壁ではなく、ある空力学者の言いまわしが新聞で誇張されて広まった言葉だった。けれど遷音速では衝撃波で抵抗が急増し、舵が効かなくなる——挑んだパイロットは実際に命を落としている。1947年にX-1がそれを越えた経緯と、強力なエンジンより地味な「動く尾翼」が鍵だった話をたどる。
歴史

灘五郷はいつから「五郷」になったのか——数がそろった江戸、顔ぶれが決まった明治

現在の「灘五郷」の顔ぶれが決まったのは明治19年。けれど「五郷」という数そのものは、江戸後期にはもうそろっていた。宮水・水車精米・丹波杜氏・樽廻船という条件が重なり、灘が「江戸の酒の8割」を担うまでになった形成史を、いつ何が決まったのかに注目してたどる。
歴史

本住吉神社はなぜ「本」を名乗るのか——日本書紀の地名と、延喜式に載らない元宮の主張

神戸市東灘区の本住吉神社は、大阪の住吉大社に対して「うちが元宮だ」と主張する小さな社です。根拠は日本書紀の「大津渟中倉之長峡」の解釈で、廣田・生田・長田と並ぶ立地や本居宣長の支持を挙げます。一方で延喜式神名帳に名がないという不利もあり、1800年の元宮論争は今も決着していません。