言葉

「お」はいつから丁寧語になったのか——「大御」から「お酒」へ、うすれていく敬意

お酒、お料理、おにぎり。私たちは一日に何度も「お」を付けます。でもこの「お」、もとは天皇や神仏に向ける最上級の敬語でした。「大御(おほみ)」から始まった重い敬意が、千年かけてどう軽くなり、ついには言葉を美しく見せるだけの「美化語」になったのか。その道のりをたどります。
技術

電波はなぜ「周波数帯域」で用途が違うのか——長い波は遠くへ、短い波はたくさん運ぶ

潜水艦は超長波、5Gはミリ波。同じ「電波」なのに、周波数が違うだけで使い道はまるで変わります。低い波は地球を回り込んで遠くへ、高い波はまっすぐ飛んでたくさん運ぶ。その代わり遮蔽物に弱い。周波数帯ごとに用途が分かれる理由を、波の物理と電離層からたどります。
歴史

明石の子午線はなぜ「日本標準時」の基準になったのか——標準時が先に決まり、明石は後から名乗った

「明石に子午線が通るから、東経135度が日本の標準時になった」と思われがちですが、順序は逆です。先に東経135度が標準時と決まり、その線上にたまたま明石があった。しかも線が通る町は12もある。それでも明石が「子午線のまち」になったのは、地理ではなく、1人の数学者と、自腹で標識を建てた教員たちのおかげでした。
言葉

地名に残る港の言葉——「津」「泊」「浦」「湊」が描く海の地図

大津、博多、津々浦々——日本の地名には、船が泊まった場所を指す古い言葉がいくつも残っています。「津」「泊」「浦」「湊」。よく似た意味の四語が、地図の上ではきれいに違う場所に散らばる。その分布をたどると、古代の海の道がうっすら浮かび上がってきます。
科学

色はどこにあるのか——物体でも光でもない、知覚という答え

「色はどこにあるのか」——物体の表面でも、光の中でも、厳密にはない。波長を選別する物体・照明光のスペクトル・観察者の神経処理という三者の関係の中にのみ成立する知覚として、色の正体をたどる。
科学

飛行機はなぜ空を飛べるのか——「同時に出会う」という誤解と、空気を下へ曲げる翼

翼の上面は遠回りだから空気が速くなる——よく聞くこの説明は、前提のほうが間違っています。上面の空気はむしろ先に後縁へ着く。揚力を「空気を下へ曲げる反作用」と「翼を回る循環」から捉え直し、データを疑って飛んだライト兄弟の話までたどります。
歴史

六甲山はなぜハイキングの山になったのか——神戸の外国人が開き、市民の日課になった山歩き

神戸の市街地のすぐ北にそびえる六甲山は、休日も平日の早朝もハイカーでにぎわう山です。なぜここまで「登る山」になったのか。港を開いた神戸にやってきた外国人が別荘やゴルフ場を開き、毎朝山に登る習慣まで持ち込み、それを市民が受け継いでいった歴史をたどります。
歴史

阪神間モダニズムとは何だったのか——私鉄が郊外に育てた、洋館と洋装の生活文化

芦屋や夙川を歩くと、白壁に赤瓦の古い洋館がふいに現れます。なぜ大阪と神戸のあいだのこの一帯に、洋館が集まっているのか。大正から昭和の初めにかけて、阪神電鉄や阪急が郊外の丘に住宅地を開き、洋館に住み洋服を着る新しい暮らしが花開きました。「阪神間モダニズム」と呼ばれた文化圏が、どんな地理と鉄道と人の上に成り立っていたのかをたどります。
科学

月はなぜいつも同じ面を向けているのか——自転を止めたのではなく、公転と足並みをそろえた

月はいつも同じ顔をこちらに見せています。そのせいで「月は自転していないから」と思われがちですが、話は逆で、月はちゃんと自転しています。ただ、その自転の周期が公転の周期とぴたり同じ約27.3日に合わせ込まれている——これが潮汐固定です。潮汐がどうやって月にブレーキをかけたのか、その同じ力で月が今も遠ざかり地球の1日が延びていること、そして実は月面の約59パーセントが見えていることまでをたどります。
科学

台風はなぜ日本に来るのか——高気圧のへりを回って、偏西風に捕まるまで

台風は毎年のように日本へやってきます。地図の上で気ままに蛇行しているように見えますが、その進路は偶然ではありません。貿易風で西へ流され、太平洋高気圧のへりを回り、最後は偏西風に捕まって東へ折れる——三つの風に乗る道筋に、台風自身が北西へにじり寄るクセまで重なって、あの曲線は引かれます。なぜ夏と秋で道が変わり、春や冬には来ないのか。台風の進路を決める気圧配置の構造をたどります。