言葉

地名に残る港の言葉——「津」「泊」「浦」「湊」が描く海の地図

大津、博多、津々浦々——日本の地名には、船が泊まった場所を指す古い言葉がいくつも残っています。「津」「泊」「浦」「湊」。よく似た意味の四語が、地図の上ではきれいに違う場所に散らばる。その分布をたどると、古代の海の道がうっすら浮かび上がってきます。
科学

色はどこにあるのか——物体でも光でもない、知覚という答え

「色はどこにあるのか」——物体の表面でも、光の中でも、厳密にはない。波長を選別する物体・照明光のスペクトル・観察者の神経処理という三者の関係の中にのみ成立する知覚として、色の正体をたどる。
科学

飛行機はなぜ空を飛べるのか——「同時に出会う」という誤解と、空気を下へ曲げる翼

翼の上面は遠回りだから空気が速くなる——よく聞くこの説明は、前提のほうが間違っています。上面の空気はむしろ先に後縁へ着く。揚力を「空気を下へ曲げる反作用」と「翼を回る循環」から捉え直し、データを疑って飛んだライト兄弟の話までたどります。
歴史

六甲山はなぜハイキングの山になったのか——神戸の外国人が開き、市民の日課になった山歩き

神戸の市街地のすぐ北にそびえる六甲山は、休日も平日の早朝もハイカーでにぎわう山です。なぜここまで「登る山」になったのか。港を開いた神戸にやってきた外国人が別荘やゴルフ場を開き、毎朝山に登る習慣まで持ち込み、それを市民が受け継いでいった歴史をたどります。
歴史

阪神間モダニズムとは何だったのか——私鉄が郊外に育てた、洋館と洋装の生活文化

芦屋や夙川を歩くと、白壁に赤瓦の古い洋館がふいに現れます。なぜ大阪と神戸のあいだのこの一帯に、洋館が集まっているのか。大正から昭和の初めにかけて、阪神電鉄や阪急が郊外の丘に住宅地を開き、洋館に住み洋服を着る新しい暮らしが花開きました。「阪神間モダニズム」と呼ばれた文化圏が、どんな地理と鉄道と人の上に成り立っていたのかをたどります。
科学

月はなぜいつも同じ面を向けているのか——自転を止めたのではなく、公転と足並みをそろえた

月はいつも同じ顔をこちらに見せています。そのせいで「月は自転していないから」と思われがちですが、話は逆で、月はちゃんと自転しています。ただ、その自転の周期が公転の周期とぴたり同じ約27.3日に合わせ込まれている——これが潮汐固定です。潮汐がどうやって月にブレーキをかけたのか、その同じ力で月が今も遠ざかり地球の1日が延びていること、そして実は月面の約59パーセントが見えていることまでをたどります。
科学

台風はなぜ日本に来るのか——高気圧のへりを回って、偏西風に捕まるまで

台風は毎年のように日本へやってきます。地図の上で気ままに蛇行しているように見えますが、その進路は偶然ではありません。貿易風で西へ流され、太平洋高気圧のへりを回り、最後は偏西風に捕まって東へ折れる——三つの風に乗る道筋に、台風自身が北西へにじり寄るクセまで重なって、あの曲線は引かれます。なぜ夏と秋で道が変わり、春や冬には来ないのか。台風の進路を決める気圧配置の構造をたどります。
歴史

神戸の外国人居留地はなぜあそこにできたのか——「兵庫開港」と呼ばれた、3.5キロ東の砂地

開国のとき外国に開かれたのは、当然「神戸」だった——そう思いがちですが、幕府が条約で約束した開港地は神戸ではなく「兵庫」でした。しかも実際の外国人居留地が築かれたのは、その兵庫の中心から東へ3.5キロ離れた砂地の神戸村。京都に近い港を嫌った朝廷、水深を測った英国公使、上海帰りの技師が引いた碁盤の目——「兵庫開港」と呼ばれながら神戸にできた居留地の理由をたどります。
科学

化石はなぜ残るのか——速く埋もれた骨だけが、石になる

何億年も前の生き物の姿を、私たちは化石で知ります。でも、死んだ生き物のほとんどは化石にならず、跡形もなく消えていきます。残るかどうかを分けるのは、死んだ直後の数日でした。速い埋没で腐敗を止め、地下水の鉱物が骨に染み込んで石に置き換わる——その条件を、化石化の仕組み、軟体部まで残る奇跡の地層ラーゲルシュテッテン、そして化石記録そのものの偏り(タフォノミー)からたどります。
科学

地震の「マグニチュード」と「震度」は何が違うのか——「1」増えると、エネルギーは32倍

地震速報の「マグニチュード」と「震度」を、なんとなく同じものだと思っていないでしょうか。マグニチュードは地震そのものの規模で、一つの地震に一つだけ。震度は各地点の揺れの強さで、場所ごとに変わります。マグニチュードは対数の尺度で、1増えるとエネルギーは約32倍。巨大地震では頭打ちするため、東日本大震災は速報M7.9が最終的にMw9.0へと修正されました。二つの尺度が何を測っているのかを、物理から整理します。