文化史

歴史

神戸の外国人居留地はなぜあそこにできたのか——「兵庫開港」と呼ばれた、3.5キロ東の砂地

開国のとき外国に開かれたのは、当然「神戸」だった——そう思いがちですが、幕府が条約で約束した開港地は神戸ではなく「兵庫」でした。しかも実際の外国人居留地が築かれたのは、その兵庫の中心から東へ3.5キロ離れた砂地の神戸村。京都に近い港を嫌った朝廷、水深を測った英国公使、上海帰りの技師が引いた碁盤の目——「兵庫開港」と呼ばれながら神戸にできた居留地の理由をたどります。
歴史

和暦と元号——吉凶で改め、最後は法律で残した

「令和」で日本はおよそ248番目(数え方では232とも)の元号を迎えました。もとは古代中国で皇帝が時間まで支配する装置として生まれ、日本では645年の「大化」に始まります。めでたい瑞兆でも、災害や疫病でも、干支の巡りでも改元してきた歴史、明治の一世一元、戦後にいったん法的根拠を失い1979年の元号法で残った経緯、そして「永」が29回も選ばれた2字の縁起までをたどります。
技術

コンクリートはなぜ1000年もつのか——欠陥とされた石灰の粒が、ひびをふさぐ

古代ローマのコンクリートは2,000年経っても崩れず、海中の防波堤はむしろ強くなっています。一方、現代の鉄筋コンクリートの寿命は50〜100年ほど。この差はどこから来るのでしょうか。長く欠陥と見られてきた「石灰の白い粒」が、じつはひびを自分でふさぐ自己修復の鍵だった——2023年のMITの研究を入り口に、海水が育てる鉱物、現代コンクリートが鉄筋とともに朽ちる仕組み、そして速さと寿命のトレードオフまでをたどります。
言葉

カタカナ語はなぜ定着するものと消えるものがあるのか——クラスターは残り、オーバーシュートは消えた

新しいカタカナ語は次々と生まれますが、定着して辞書に残るものと、数年で消えるものがあります。両者を分けるのは何でしょうか。コロナ禍の「クラスター」と「オーバーシュート」の明暗を入り口に、言い換えがきかない・語彙の中に居場所がある・日本語の口に合う長さに縮む・意味が育つ、といった生き残りの条件をたどります。戦時中の敵性語排斥や国立国語研究所の言い換え提案からは、言葉を上から操作することの難しさも見えてきます。
歴史

「天皇」はいつ生まれたのか——「大王」から改めた7世紀と、定説を動かした木簡

「天皇」という称号は最初からあったわけではありません。7世紀まで、日本の王は「大王(オオキミ)」と呼ばれていました。いつ「天皇」へ変わったのかは長く論争で、推古朝説と天武朝説が対立してきました。流れを変えたのが飛鳥池遺跡から出た木簡です。遣隋使の国書、唐の高宗、道教の北極星、そして律令と明治の法制化まで、一つの称号が生まれ定着するまでをたどります。
歴史

平清盛はなぜ神戸に港を作ったのか——都に近い港と、海に沈めた経文の石

平清盛は私財を投じて神戸の港・大輪田泊を整えました。船を悩ませた南東の風をふせぐため、海に石を沈めて人工島まで築いています。狙いは、宋の船を博多で止めず瀬戸内海の奥、都のすぐ近くまで引き込むこと。法皇に宋人を引き合わせて貴族を仰天させた賭けから、福原遷都の夢、清盛の死後に兵庫津・神戸港へと受け継がれた港の来歴までをたどります。
歴史

灘の酒はなぜ「辛口」なのか——宮水の硬さと、江戸がえらんだ味

菊正宗も白鶴も、灘の酒はそろって「辛口」を看板にします。その辛さは、西宮で湧く硬い水「宮水」の化学と、はるばる江戸まで運ばれた市場の事情が重なって生まれたものでした。水を入れ替えて味の謎を突き止めた酒蔵の話から、樽廻船が運んだ年間100万樽の酒まで、灘が「男酒」になった理由をたどります。
歴史

菟原処女伝説はどう変容したのか——万葉の挽歌から能・鷗外へ、書き換えられた娘の死

二人の男に求婚され、選べずに死んだ娘。神戸・東灘の処女塚古墳に重ねられた菟原処女の物語は、万葉集の挽歌から『大和物語』、能『求塚』、森鷗外の戯曲へと1200年かけて語り直されてきました。骨組みは変わらないのに、娘の死の理由と意味だけが時代ごとに書き換えられていく。その変容をたどります。
歴史

湊川神社——光圀の墓碑から始まり、最初の別格官幣社になるまで

神戸の「楠公さん」こと湊川神社。祀られる楠木正成が湊川で自刃したのは1336年、神社の創建は明治5年で、その間およそ500年が空いている。徳川光圀が建てた1基の墓碑から、幕末の志士の崇敬、そして日本で最初の別格官幣社となるまで——1人の武将が時代ごとに語り直されてきた跡をたどる。
歴史

有馬温泉はなぜ「日本最古」と呼ばれるのか——3000年の伝説と、600万年前の海水

「日本最古の温泉」と呼ばれる有馬温泉。その根拠は一つではなく、三羽のカラスの神話、日本書紀が伝える天皇の長逗留、そして火山のない土地に高温の湯を湧かせる地質と、まるで層の違う時間が重なっている。600万年前の海水がいま湧くしくみと、金泉・銀泉の正体までをたどる。