半導体はなぜ「半」導体なのか——導体と絶縁体の「あいだ」が世界を動かす

半導体はなぜ「半」導体なのか——導体と絶縁体の「あいだ」が世界を動かす 技術

「半導体」という名前は、よく考えると不思議です。電気をよく通すものを導体、通さないものを絶縁体と呼ぶのなら、「半・導体」は電気を半分だけ通すのか。そう思いたくなりますが、違います。

ここでいう「半」は、量の話ではありません。電気をよく通す導体と、ほとんど通さない絶縁体の、ちょうど中間に位置する——その立ち位置を指した言葉です。そして、この中間にいるという性質こそが、半導体を現代の主役に押し上げました。なぜ中間だと、そんなに役に立つのでしょうか。

「半分」ではなく「あいだ」

物質が電気を通すかどうかは、電子の動きやすさで決まります。固体の中で電子が取りうるエネルギーには、電子がぎっしり詰まった「価電子帯」と、その上で自由に動ける「伝導帯」があり、その間には電子が居られない隙間があります。この隙間が「バンドギャップ」です。

金属(導体)には、このギャップがほとんどありません。電子はいつでも動けるので、よく電気を通します。逆に絶縁体はギャップがとても広く、電子は隙間を飛び越えられないので、電気を通しません。半導体は、ちょうどその中間にあります。Semi journal の解説によれば、シリコンのバンドギャップはおよそ1.1電子ボルトで、絶縁体よりかなり狭いそうです。だから、熱や光や電圧といった少しのエネルギーで、電子が隙間を飛び越えて動きだします。ふだんは電気を通さないのに、きっかけ次第で通すようにもなる、というわけです。

ファラデーが見つけた、あべこべの現象

その不思議さに最初に気づいたのは、電磁気の研究で知られるマイケル・ファラデーでした。1833年、硫化銀という物質を調べていて、奇妙なことに気づきます。ふつう金属は、温めると電気を通しにくくなります。ところが硫化銀は逆で、温めるほどよく電気を通しました。コンピュータ歴史博物館の記録では、ファラデーはこれを「並外れた事例」と書き残しています。

もっとも、この発見がすぐ役に立ったわけではありません。中間にいる物質の意味が理解され、技術になるまでには、ここから100年以上かかりました。

わざと不純物を混ぜる

純粋なシリコンの結晶は、じつはあまり電気を通しません。これを真性半導体といいます。中間とはいっても、そのままでは絶縁体寄りで、使い道が限られます。

ところが半導体には、ほかの材料にない一手があります。ごく微量の不純物を、わざと混ぜるのです。「ドーピング」と呼ばれるこの操作で加える量は、たとえば100万分の1ほど。ほんのひとつまみです。オリックス・レンテックの解説によれば、シリコンは電子を四つ持つ原子です。ここに電子を五つ持つリンを混ぜると、電子が一つ余ります。この余った電子が動いて電気を運ぶ、マイナス(negative)の担い手が多い「n型」になります。逆に電子を三つしか持たないホウ素を混ぜると、電子が一つ足りずに穴が空きます。この穴は「正孔(ホール)」と呼ばれ、まるでプラスの粒のように動きまわります。こちらが「p型」です。

n型とp型を貼り合わせた境目を「pn接合」といいます。これが電気を一方向にだけ流すダイオードになり、組み合わせれば、電気を増幅したりオン・オフを切り替えたりするトランジスタになります。

最初のトランジスタ

その性質を使って世界を変えたのが、トランジスタでした。半導体ポータルによれば、1947年、アメリカのベル研究所で、ジョン・バーディーン、ウォルター・ブラッテン、ウィリアム・ショックレーの3人が、最初のトランジスタを動かしてみせます。点接触型と呼ばれる、ゲルマニウムに金属の針を立てたような素朴な装置でした。それでも、それまで真空管が担っていた増幅やスイッチの役目を、はるかに小さく、こわれにくく、わずかな電力でこなしました。3人はこの功績で1956年のノーベル物理学賞を受けています。

なぜシリコンばかりなのか

最初のトランジスタはゲルマニウムでした。それがいまや、半導体といえばまずシリコンを指すほどになっています。なぜでしょうか。

理由は重なっています。まず、材料。菅製作所の解説は、シリコンが地球の地殻で酸素の次に多い元素だと述べています。砂や石の主成分ですから、枯れる心配がありません。9が11個も並ぶ「イレブンナイン」と呼ばれる純度にまで精製できる扱いやすさもあります。

決め手は、表面にできる膜でした。シリコンは酸素と結びつくと、二酸化ケイ素というとても安定した酸化膜を表面に作ります。これが効きました。この膜がきわめて優秀な絶縁体になるので、電気を通したい部分と通したくない部分を、同じ1枚のウェハーの上で作り分けられるのです。ゲルマニウムには、こういう都合のいい酸化膜ができず、高温にも弱いという弱点がありました。

ちなみに、その牙城にも変化が起きています。電気自動車のインバーターのように高い電圧や大きな電流を扱う場面では、シリコンよりバンドギャップの広い炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)が使われはじめました。

オンとオフ

導体でも絶縁体でもなく、その中間にいる。半導体のこの立ち位置が、電気を通すか通さないかを切り替えるスイッチを生みました。いま、スマートフォン1台の中だけでも、何十億ものトランジスタが、その切り替えを毎秒くり返しています。

参考・出典

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