夕焼けはなぜ赤いのか——青空をつくる散乱が、赤い夕空も生むわけ

夕焼けはなぜ赤いのか——青空をつくる散乱が、赤い夕空も生むわけ 科学

夕焼けの赤は、誰もが知っている空の色です。けれど「なぜ赤いのか」と問われると、意外に答えにくいものです。さらに不思議なのは、その赤を生んでいる仕組みが、昼間のあの青空とまったく同じだということ。正反対に見える二つの色が、たった一つの現象から出てきます。その種明かしをしていきます。

太陽の光は、色の束

太陽の光は「白い」と思われがちですが、実際には赤から紫まで、いろいろな色(波長)の光が混ざり合った束です。雨上がりの虹は、その束が水滴でほどけて見えたものにほかなりません。空の色を考えるときも、まずこの「白い光は色の集まり」という前提から始めます。

昼の空が青いわけ

光が空気の分子にぶつかると、進む向きを変えて四方へ散らばります。これを「散乱」といい、とくに光の波長くらいか、それより小さな粒による散乱を「レイリー散乱」と呼びます。19世紀の物理学者レイリー卿が説明したものです。

このレイリー散乱には、はっきりした癖があります。波長が短い光ほど、強く散らばるのです。シーシーエスの解説によれば、散乱の強さは波長の4乗に反比例し、たとえば波長400nmの紫の光は、波長800nmの赤の光にくらべて16倍も強く散らばります。可視光のなかでは波長の短い青ほどよく散らばるので、昼間、頭上から差してくる光のうち、青い成分が空のあちこちで散らされ、空一面に広がって目に届きます。

なぜ紫ではないのか

ここで、鋭い人なら引っかかるはずです。青よりさらに波長が短い紫は、もっと強く散らばるのではないか。だとしたら、空は紫色に見えてもよさそうなものです。

キヤノンのサイエンスラボは、これに二つの答えを挙げています。そもそも太陽の光には紫の成分が青ほど多く含まれず、しかも人間の目は紫の光に鈍いのです。量が少ないうえに目にも届きにくい紫は、青のうしろに隠れてしまいます。

光の通り道が、ぐっと長くなる

夕焼けに話を移します。昼と夕方で変わるのは、太陽の光が大気を通り抜けてくる距離です。太陽が頭の真上に近いとき、光が通る大気の厚みは、せいぜい10kmほど。ところが夕方、太陽が地平線すれすれまで下がると、光は大気を斜めに、ずっと長く突っ切ってきます。理科年表の解説では、その距離はおよそ160kmにもなるそうです。

この長い道のりが、すべてを変えます。青い光が散らばりやすいのは昼と同じですが、通り道がこれだけ長いと、青は何度も散らされ、目に届く前にその大半がよそへ逸れてしまいます。残ってまっすぐ目に届くのは、散らばりにくい赤や橙の光だけ。地平線すれすれの夕日が赤いのは、そのためです。

青空も夕焼けも、もとは同じレイリー散乱です。違うのは、光が大気を通る距離だけ。短い道のりでは青が空に広がり、長い道のりでは赤が残ります。

雲が白い理由

空に浮かぶ雲の白は、このレイリー散乱では説明できません。雲をつくる水滴は、光の波長よりずっと大きい粒だからです。シーシーエスによれば、粒が大きいと起きる「ミー散乱」では、波長によらずどの色もほぼ同じように散らばります。赤も青もすべての波長が均等に散るので、混ざり合った白い光のまま目に届きます。

火星の夕焼けは青い

空気の中身が違う星では、どうなるのでしょうか。NASAの探査車キュリオシティは、2015年、火星のゲール・クレーターで夕暮れを撮影しました。写ったのは、地球とは逆さまの光景です。沈む太陽のまわりだけが、青くにじんでいました。NASAジェット推進研究所の解説によれば、火星の大気に漂う細かな砂塵が、ちょうど青い光を通しやすい大きさで、散らばった青は太陽の近くにとどまります。赤や黄のほうは、空全体へ散っていきます。地球で青を散らして遠ざける散乱が、火星では青を太陽のそばに残します。

夕焼けが「晴れ」を告げる

空の色は、昔から天気の予報にも使われてきました。「夕焼けは晴れ、朝焼けは雨」ということわざです。これにも理屈があります。日本の上空では偏西風が吹いていて、天気はおおむね西から東へ移っていきます。Yahoo!天気の解説によれば、夕方に西の空がよく晴れて夕焼けが見えるなら、その晴れ間がこれから自分の上へやってくる見込みが高いといいます。逆に朝、東の空が焼けるのは、西から雨をもたらす低気圧が近づくサインになりやすいといえます。

空の色がその時々で変わって見えても、うしろで働いているのは、同じ一つの散乱です。

参考・出典

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