獅子 眞惟

科学

なぜ人は音楽に感動するのか——次の音を待つ脳と、当たりすぎない快感

音楽は食べられず、身も守りません。それでも鳥肌が立ち、涙が出ます。脳を測ってみると、ドーパミンは音が鳴るより先に出ていました。予測と裏切りのつり合い、快感を消す薬の実験、そして音楽だけ楽しめない人たちの脳から、この不思議な報酬の正体をたどります。
歴史

廃藩置県はなぜ一日で実行できたのか——借金を引き受けた新政府と、抵抗しなかった殿様たち

260年続いた幕藩体制が、明治4年7月14日のたった一日で終わりました。300近い大名家が領地を失ったのに、まとまった反乱は起きていません。軍事力よりも、借金の処理のほうが効いていたようです。藩債の肩代わりと御親兵、そして302県から43県へ至る統廃合をたどります。
科学

コンパスはなぜ北を向くのか——磁極ではなく磁力線をたどる針と、ずれ続ける北

方位磁針は北極を指している——そう思っている人は多いはずです。実際には針は磁北極を目がけているのではなく、その場所の磁力線に沿って向きを決めています。地図の北とのずれ、加速しながら動く磁極、そして1088年の中国から始まった針の歴史をたどります。
言葉

翻訳はなぜ難しいのか——等価という幻想と、訳し直され続ける言葉

翻訳アプリで用は足りるのに、翻訳者は「訳せない」と言います。難しさの正体は語彙ではなく、言語ごとに違う「言わねばならないこと」にあります。等価という前提が崩れるところから、明治日本が作った翻訳語、機械翻訳がまだ越えていない線までをたどります。
歴史

江戸の都市インフラはなぜ高度だったのか——水と循環と火消の町

18世紀の江戸は人口100万人、当時世界最大級の都市でした。それを支えたのが、高低差の乏しい土地に引いた上水道、し尿さえ資源にした徹底したリサイクル、そして大火とたたかう火消の仕組みです。三つのインフラから江戸の都市力をたどりつつ、「循環型社会」と美化しすぎない目でその光と影を見ます。
科学

なぜ薬に副作用があるのか——効くことと、避けきれない代償

副作用のない薬があればいいのに——誰もが一度は思います。でも副作用の多くは、薬が効くのと同じ仕組みから生まれます。標的が体のあちこちにあること、効く量と危ない量が地続きなこと、人によって代謝が違うこと。エールリヒの「魔法の弾丸」の理想と現実を、選択毒性・用量反応曲線・個人差からたどります。
科学

なぜ海は青いのか——水が飲み込む赤と、残された青

海が青いのは空を映しているから——そう習った人は多いはずです。ところが海の青の主役は、反射ではなく水そのもの。水は赤い光を吸い込み、青だけを通します。純水がわずかに青い理由から、深さで色が変わるわけ、プランクトンが海を緑に染めるしくみ、そして衛星が海の色から中身を読む話まで、青の出どころをたどります。
技術

電池はなぜ「切れる」のか——反応が終わるとき、電圧は落ちる

使い切った電池は、なぜもう使えないのか。電池は化学反応で電気を生む装置で、反応が進むほど電圧はじわじわ落ちていきます。乾電池が切れる仕組み、使わなくても減る自己放電、充電池がへたる理由まで、起電力と化学反応の関係から「電池の寿命」をたどります。
言葉

アルファベットはどこから来たのか——牛の頭からはじまった26文字

いま使うA〜Zの26文字は、たった一つの発明にさかのぼれます。エジプトの絵文字を借りて子音記号を作った古代セム人、母音を足したギリシア人、字を並べ替えたローマ人。Aがもともと牛の頭だった話から、&が「27番目の文字」だった話まで、アルファベット3000年余りの旅をたどります。
歴史

オリンピックはなぜ4年ごとなのか——古代ギリシャの暦が決めた周期を、近代がなぞった

オリンピックが4年に1度なのは、テレビ放送の都合でも競技の準備期間でもありません。答えは2800年ほど前のギリシャにさかのぼり、月の暦と太陽の暦のつじつま合わせから生まれた周期でした。しかもその4年は「オリンピアード」という時計として、歴史を数える単位にもなりました。古代の暦のリズムを、近代があえてなぞった経緯をたどります。