地球は「青い星」と呼ばれます。1972年にアポロ17号の乗組員が撮影した「ブルーマーブル」と呼ばれる地球の写真は、その呼称を世界中に定着させました。しかし、少し立ち止まって考えてみると、疑問が浮かびます。同じ太陽光を受けているはずなのに、なぜ惑星によって見える色がこれほど違うのでしょうか。
色が決まる仕組み:三つの要因
惑星の色を決めるものは、おおよそ三つの要因に整理できます。大気の組成、大気中のエアロゾル(微粒子)、そして表面の物質です。どれが主役になるかは惑星によって異なります。
大気による散乱と吸収が最も根本的な要因です。太陽光は白色光、つまり赤から紫までの波長を含んでいます。大気中の分子や粒子はこの光と相互作用し、波長によって異なる振る舞いをします。窒素・酸素を主成分とする地球の大気では、波長の短い青い光が強く散乱されます(レイリー散乱)。宇宙から見た地球が青く見えるのは、この散乱光が支配的だからです。加えて、地表の約71パーセントが海水で覆われており、海が青い光を強く反射することも大きく寄与しています。
大気がなければどうなるでしょうか。月がその例です。大気をほぼ持たない月は、太陽光をほぼそのまま反射するため、白から灰色に見えます。大気は色の「フィルター」として機能しているわけです。
大気成分による吸収も色に大きく影響します。特定の分子は特定の波長の光を選択的に吸収します。これが惑星の色に直接的な指紋を残します。
表面の物質は、大気が薄い惑星では支配的な要因になります。
太陽系の惑星を一惑星ずつ見ていく
水星は灰色に見えます。大気がほぼ存在しないため、表面の岩石がそのまま太陽光を反射します。長年にわたる隕石衝突と太陽風による「宇宙風化」で黒みがかった岩石に覆われており、アルベド(反射率)は低く、全体として暗い灰色の印象を与えます。
金星は黄白色に見えます。太陽系で最も明るい惑星として知られますが、その理由は硫酸の雲にあります。大気の上層部を覆う濃密な硫酸雲が太陽光の約70パーセントを反射するため、遠くから見ると明るい白〜黄色に輝きます。表面は約460℃という灼熱の環境ですが、宇宙から見える色は大気上層部が決めています。
火星が赤く見えるのは、表面に酸化鉄(いわゆる錆)を含む塵が広く分布しているためです。大気は薄く、二酸化炭素が主成分ですが、その薄い大気に舞い上がった赤茶色の微粒子が空全体を赤みがかった色に染めます。NASAの探査機が撮影した火星の空は、日中は赤みがかったピンク色で、逆に日の出・日の入り時には地球とは逆に青みがかって見えるという興味深い特徴があります。火星の大気は薄いためレイリー散乱が弱く、日が低い角度のときに残った青い光が届くためです。
木星は白・茶・オレンジが複雑に縞模様をなしています。大部分が水素とヘリウムからなるガス惑星で、表面の「縞」は高度の異なるアンモニア・硫黄化合物などの雲の帯です。高い高度にある雲は白いアンモニア氷で、低い高度にある雲は硫黄化合物によってオレンジや褐色に色づいています。有名な「大赤斑」は300年以上続く巨大嵐で、正確な発色原因はまだ完全には解明されていません。
土星はくすんだ黄〜薄茶色をしています。木星に似た縞模様を持ちますが、コントラストはより穏やかです。有名なリングは水と岩石の氷からなり、ほぼ白色です。
天王星と海王星——似ているようで違う青
ここからは、色の話として特に興味深い二つの惑星に触れます。
天王星と海王星はどちらも青い惑星として知られています。大きさ・質量・大気組成がよく似た「巨大氷惑星」で、同じ仲間に分類されます。しかし両者の青は、同じではありません。天王星は空のような淡い青(シアン)で、海王星はより深い青です。なぜこれほど似た惑星なのに、色が違うのでしょうか。
両惑星が青く見える基本原理は共通です。どちらの惑星も、大気中に含まれているメタン分子が太陽光の赤い光を吸収し、青い光を散乱させるために青く見えます。ガスの巨大なフィルターが赤を取り除くことで、青だけが宇宙に向かって返ってくる。
では色の濃さの違いはなぜ生まれるのか。2022年、オックスフォード大学のPatrick Irwinらの研究チームが一つの答えを示しました。色に影響を与えるのは大気中間層のもやの粒子からなる層で、天王星の方が海王星よりもこのもやが厚い。もやがなければ両惑星とも深い青色に見えるはずだが、もやが多いと青以外の光も反射されやすくなり、より淡い色になる。
さらに、海王星は天王星よりも大気の動きが活発なため、メタン粒子がかき混ぜられてもやの層に集まりやすく、メタン雪として降ることでもやが取り除かれやすい。その結果として海王星の方が青色が強く見える。
つまり「大気が荒れているほど青い」という、直感に反するような結論です。さらに付け加えると、ボイジャー2号の撮影画像で確定したとされてきた両惑星の色のイメージは、実際に肉眼で見た場合に最も近い「真の色」を正確に反映しているとは限らず、2024年の研究では天王星と海王星はどちらもわずかに緑色を帯びた淡い青色であると確定した。深い紺碧として知られてきた海王星の色は、処理された画像が作り上げたイメージでもあった、ということです。
色はその惑星の「履歴書」
こうして各惑星の色を並べてみると、色は単なる外見ではなく、その惑星の物理的・化学的な性格をそのまま映し出したものだとわかります。大気があるか、何が含まれているか、表面に何があるか、大気の循環はどれほど活発か——それらすべてが色として現れています。
地球が青く見えるのは、窒素・酸素という特定の大気組成と、大量の液体の水という、非常に限られた条件が重なった結果です。もし地球の大気がメタンで満ちていれば、宇宙から見た地球はまったく異なる色をしていたでしょう。
「青い星」という呼び名は、地球の特異性を端的に示してもいます。太陽系の惑星の中で、これほど深く青い惑星は他にありません。
参考・出典
- 国立天文台暦計算室「大気による光の散乱」 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/C2E7B5A42FBBB6CDF0.html
- 宇宙科学研究所キッズサイト「海王星が青く見えるのはなぜですか?」 https://www.kids.isas.jaxa.jp/faq/solarsystem/ss08/000172.html
- sorae「天王星と海王星の『真の色』を確定」 https://sorae.info/astronomy/20240111-uranus-neptune.html
- sorae「天王星と海王星の色はなぜ違う?」 https://sorae.info/astronomy/20220606-uranus-neptune.html
- アストロアーツ「なぜ海王星は天王星より青いのか」 https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/12561_uranus_neptune
- アストロピクス「天王星と海王星の色がなぜ違うのか」 https://astropics.bookbright.co.jp/why-uranus-and-neptune-are-different-colors
- Astronoo「なぜ惑星は色が違うのか?」 https://astronoo.com/ja/kodomo/wakusei-no-iro.html
- 海王星(Wikipedia) https://ja.wikipedia.org/wiki/海王星
- 天王星型惑星(Wikipedia) https://ja.wikipedia.org/wiki/天王星型惑星


