惑星の色はどう決まるのか——空の青、火星の赤、取り違えられた氷惑星の青

惑星の色はどう決まるのか——空の青、火星の赤、取り違えられた氷惑星の青 科学

「青い地球」に「赤い火星」。惑星にはそれぞれ、色のイメージがあります。宇宙の写真集をめくれば濃い藍色の海王星も並んでいて、太陽系はずいぶんカラフルに見えます。

ところが、そのうち少なくとも一つの色には、人の手が少し加わっていました。では、惑星の色はそもそも何で決まるのでしょうか。たどっていくと、「大気が光をどう散らすか」「地面や雲が何でできているか」という、案外しぶとい物理の話に行き着きます。

地球の青は、空と海で理由が違う

宇宙から見た地球が青いのは、よく「海があるから」と説明されます。半分は当たっていますが、主役はむしろ大気のほうです。

太陽の白い光が大気に入ると、空気の分子が光をあちこちに散らします。このとき、波長の短い青い光ほど強く散らばります。これがレイリー散乱で、昼の空が青いのも、夕日が赤いのも、もとは同じ仕組みです。NASAの解説では、夕方は光が大気を通る距離が長くなり、青がほとんど散らされてしまうため、残った赤や橙だけが目に届くと説明されています。

では海の青も同じかというと、こちらは別の話です。理由は、水そのものが赤い側の光を吸い込んでしまうことにあります。マギル大学の科学コラムは、水は赤い波長を吸収するために青く見えるのであって、空の色を映しているわけではない、と整理しています。コップ一杯の水が無色なのに深い海が濃い青に見えるのは、水の量が増えるほど赤が吸われていくからです。

火星の赤は錆

火星の赤は、もっと素朴です。地面が錆びている、ほとんどそれだけのことです。

火星の岩や砂に含まれる鉄が酸化し、酸化鉄——つまり錆——になっています。NASAは「火星の土の鉄分が酸化して(錆びて)、表面が赤く見える」と端的に書いています。酸化鉄は青と緑の光を吸って赤を返すので、その粉塵が大気にも舞い上がり、遠くから見た惑星全体を赤く染めます。

おもしろいのは、その「錆び方」が近ごろあらためて議論になっている点です。2025年2月、ブラウン大学のアドマス・ヴァランティナスらが、火星の赤い塵は水を含まない酸化鉄(ヘマタイト)ではなく、水を含む鉱物フェリハイドライトでよく説明できる、とNature Communications誌に報告しました。フェリハイドライトは冷たい水のなかで素早くできる鉱物です。これが正しければ、火星は干上がってから錆びたのではなく、まだ水があった時代に錆びはじめたことになります。赤い色が、かつて湿っていた頃の名残だというわけです。

海王星は、思ったほど青くない

ここまではだいたい教科書どおりですが、問題はその教科書に載っている写真のほうにありました。

天王星と海王星は、どちらも大気にメタンを含みます。メタンは赤い光を吸うので、はね返ってくるのは青緑の側。だから二つとも青く見えます。ここまでは素直な話です。けれど多くの人が思い浮かべるのは、淡い水色の天王星と、深く沈んだ藍色の海王星という、はっきり違う姿でしょう。

その濃い藍色の海王星が、実物とはかなり違っていました。あの色のもとは、1989年にボイジャー2号が撮った画像です。研究者のパトリック・アーウィンによれば、ボイジャーの撮像チームは、見えてきた雲や模様を伝えるために、あえてコントラストを強めた画像を公開していました。海王星は、本来よりずっと濃い青に仕上げられていたのです。画像の説明文にはその断りが書かれていたものの、時間がたつうちに、加工のほうが忘れられていきました。

2024年、アーウィンらはハッブル宇宙望遠鏡などの分光データから両惑星の色を復元し、天王星と海王星は実はよく似た緑がかった青だと示しました。海王星がほんのわずかに青いのは、大気のヘイズ(もや)の層が天王星より薄いためです。NASAの解説によれば、天王星では動きの鈍い大気にヘイズがたまって白っぽくかすむのに対し、海王星では大気がよくかき混ぜられ、メタンの雪としてヘイズを下へ落とすので、もやが薄く、青がよく透けて見えます。

調べていて意外だったのは、あの濃紺の海王星が、半ば「広報用の色」だったということでした。誤りというより、驚きを伝えるための演出が、いつのまにか事実の顔をして残っていた——そういう経緯のようです。

色は、表面だけの話ではない

こうして並べると、惑星の色は一つの原因では決まっていません。地球は大気の散乱と水の吸収、火星は地面の鉱物、氷の惑星はメタンとヘイズ。光をどう散らし、どう吸い、どんな粒が漂っているか——その積み重ねが、私たちの目に届く一色になります。

海王星の青が最後に付け加えるのは、もう一つの要素です。その色を見て、撮って、人に伝える私たちの側の都合もまた、惑星の「色」の一部になりうる、ということでした。

参考・出典

タイトルとURLをコピーしました