地震の速報を見ると、「マグニチュード」と「震度」という二つの数字が並びます。なんとなく、どちらも「地震の大きさ」を表していて、似たようなものだと思っていないでしょうか。
じつは、この二つは測っているものがまるで違います。片方は地震そのものの大きさ、もう片方はあなたのいる場所での揺れの強さ。混同したままだと、「マグニチュードが大きいのに、ここはあまり揺れなかった」といった当たり前のことが、妙に不思議に思えてきます。二つの尺度がそれぞれ何を見ているのか、物理から整理してみます。
規模はひとつ、揺れは場所の数だけ
マグニチュードは、地震そのものの規模です。震源で岩盤がどれだけのエネルギーを解放したか、という値で、気象庁の解説でも、一つの地震につき一つしかないと説明されています。これに対して震度は、ある地点での揺れの強さ。震源から遠ければ小さく、近ければ大きく、同じ地震でも観測点ごとにばらばらの値になります。
電球にたとえるなら、ワット数がマグニチュード、手元の明るさが震度です。強い電球でも、離れれば手元は暗いまま。「マグニチュードは大きいのに、ここは揺れていない」が起こるのは、そのためです。
「1」増えると32倍
マグニチュードの数字には、ちょっとした癖があります。目盛りが、ふつうの足し算になっていません。これは対数の尺度なのです。
気象庁によれば、値が1増えると地震のエネルギーは約32倍に、2増えると約1000倍にもなります。M8の地震ひとつで、M7なら約32個分、M6なら約1000個分。数字は1つずつ刻んでいるのに、中身は掛け算で膨らんでいきます。だからニュースで「M7.9」と「M9.0」が並ぶと、たった1.1の差に見えても、放出されたエネルギーはおよそ1000倍も違います。
この尺度を作ったのは、アメリカの地震学者チャールズ・リヒターでした。BCMナビの用語集によれば、1935年、震源から100km離れた標準的な地震計が記録する最大振幅をもとに、地震の大きさを一つの数字で表す方法を編み出します。当初はカリフォルニアの地震を念頭にした、ごく局所的な目安にすぎませんでした。
巨大地震で頭打ちする
このマグニチュード、じつは一種類ではありません。そして巨大地震になると、やっかいな弱点が顔を出します。
日本でふだん速報に使われるのは、気象庁マグニチュード(Mj)です。地震計の揺れの大きさから素早く計算できるので、津波警報のような初動に向いています。ところが、防災科学技術研究所も説明しているように、Mjはとても大きな地震になると実際より小さい値で頭打ちになってしまいます。専門的には飽和と呼ばれる現象です。
代わりに持ち出されるのが、モーメントマグニチュード(Mw)。断層が動いた面積やずれの量という、地震の物理そのものから計算するので、どれだけ巨大でも頭打ちしません。この差がはっきり表に出たのが、東日本大震災でした。最初の速報はM7.9でした。それが気象庁マグニチュードの暫定値でM8.4まで上がり、最終的にモーメントマグニチュードでMw9.0。速報のM7.9とMw9.0のあいだには、エネルギーにして1000倍ほどの開きがあります。
揺れの段階を、機械が測る
日本の震度は、0から7までの10階級です。なぜ10かといえば、震度5と6が、それぞれ「弱」と「強」に分かれているからです。この細分化のきっかけは、1995年の阪神・淡路大震災でした。震度5や6はカバーする揺れの幅が広く、被害の差も大きいものでした。ひとくくりでは防災に使いにくいと、翌年に分けられました。
測り方も、昔とは違います。かつて震度は、気象庁の職員が体に感じた揺れや周囲の被害から判断していました。気象庁によれば、1991年から計測震度計の導入が始まり、1996年までに体感による観測は姿を消しています。人の感覚から、機械の数値へ。被害の様子から判定していた震度7さえ、今は計測値で決まります。
同じ地震でも、揺れは場所ごとに違う
では、たった一つの地震が、なぜ場所によってまるで違う震度になるのでしょう。防災科学技術研究所の解説では、効いてくるのは主に三つ。震源からの距離、震源の深さ、そして地盤の固さです。遠ざかれば揺れは弱まり、やわらかい堆積層の上では逆に増幅されます。
東日本大震災のとき、震源に近い宮城県栗原市は最大の震度7を記録しましたが、東京は震度5強でした。規模を表すマグニチュードは一つきりでも、足元の条件しだいで、各地の震度はこれだけ開きます。ちなみに観測史上もっとも大きかったのは1960年のチリ地震で、マグニチュードは9.5。日本の1923年の関東地震がM7.9ですから、エネルギーにすれば数百倍の開きがあります。
二つの数字を、別々に読む
マグニチュードは、遠く離れた震源で起きた出来事の大きさ。震度は、いま自分が立っている地面の揺れ方。だから「マグニチュードは小さめなのに、ここはひどく揺れた」も、「大きな地震なのに被害は限られた」も、どちらも矛盾なく成り立ちます。速報を見るときは、地震そのものの規模と、自分のいる場所の揺れを、別々の数字として読んでみてください。それだけで、同じニュースがいくらか違って見えてくるはずです。
参考・出典
- 気象庁「震度・マグニチュード・地震情報について(よくある質問)」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq27.html
- 気象庁「震度・マグニチュード・地震情報について」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/shindo/index.html
- 防災科学技術研究所 J-SHIS「マグニチュードと震度」 https://www.j-shis.bosai.go.jp/magnitude-and-ijma
- BCMナビ(ニュートン・コンサルティング)「マグニチュード」 https://www.newton-consulting.co.jp/bcmnavi/glossary/magnitude.html
- Wikipedia(補助)「気象庁マグニチュード」 https://ja.wikipedia.org/wiki/気象庁マグニチュード


