物理学

科学

原子時計はなぜそんなに正確なのか——地球の自転をやめ、原子の振動に「1秒」を預けるまで

いまの「1秒」は地球の自転ではなく、セシウム原子が約92億回振動する時間で定められています。原子時計が桁外れに正確なのは、原子の振動には個体差も経年変化もないから。レーザーで原子を冷やすセシウム原子泉時計、光で刻む光格子時計、そして原子核を使う次世代時計まで、「1秒」を地球から原子へ、さらにその先へ預けてきた歩みと、その正確さがGPSや通信を支えるしくみをたどります。
技術

なぜ橋は落ちないのか——圧縮と引張を振り分ける、力の通り道の設計

橋が落ちないのは、材料が頑丈だからというより、力をどこへ流すかが設計されているからです。押す力(圧縮)と引く力(引張)をどう振り分けるか——アーチ、トラス、ケーブルという形の違いはここから生まれます。明石海峡大橋の1メートルの来歴から、開通4か月で崩れ落ちたタコマ橋の教訓まで、橋が立っている理由をたどります。
科学

色はなぜ見えるのか——光そのものに色はない、という出発点

赤いリンゴの赤は、物にも光にも存在しない——ニュートンはそう見抜きました。可視光の波長、物体の反射と吸収、3種類の錐体、脳の処理。色が立ち上がるしくみを、同じ服が白金にも青黒にも見える色の恒常性や、ヒト以外の動物の色覚、色覚の進化までたどります。
技術

GPSはなぜ「ずれる」のか——わざと狂わせて打ち上げる、衛星の原子時計

スマートフォンが当たり前に現在地を示す裏側で、GPS衛星の原子時計は打ち上げ前からわざとずらして設定されています。速く動く時計は遅れ、重力の弱い上空では速く進む——特殊・一般相対性理論の二つの効果が逆向きに働き、差し引き1日およそ38マイクロ秒。補正しなければ位置は1日で約10kmもずれてしまう、日常に隠れた相対論の話。
科学

惑星の色はどう決まるのか——空の青、火星の赤、取り違えられた氷惑星の青

「青い地球」「赤い火星」「濃紺の海王星」——惑星の色は何で決まるのか。大気の散乱、水や鉱物による吸収、メタンとヘイズという複数の要因から太陽系の色をたどると、あの深い海王星の青が半ば画像処理の産物だったという近年の発見にも行き着く。
科学

音速の壁はなぜ「壁」だったのか——たとえが生んだ言葉と、遷音速の三つの難所

「音速の壁」は実在の壁ではなく、ある空力学者の言いまわしが新聞で誇張されて広まった言葉だった。けれど遷音速では衝撃波で抵抗が急増し、舵が効かなくなる——挑んだパイロットは実際に命を落としている。1947年にX-1がそれを越えた経緯と、強力なエンジンより地味な「動く尾翼」が鍵だった話をたどる。