マグニチュードと震度は何が違うのか——二つの尺度が示すもの

科学

地震速報が流れるとき、必ずといっていいほど二つの数字が並ぶ。「マグニチュード6.5」「最大震度5弱」。どちらも地震の大きさを表すように聞こえるが、指しているものはまったく異なる。

この二つを混同しやすいのは、どちらも0から7前後の似た値になることや、「地震の大きさ」という曖昧な言葉でひとまとめにされがちなことが背景にある。しかし、片方は一つの地震に対してひとつしか存在しない数値であり、もう片方は同じ地震でも場所によって変わる数値だ。

震源で起きたことと、それぞれの場所で感じたこと

マグニチュードとは、地震そのもののエネルギーの大きさを示す尺度だ。震源で断層がずれるとき放出されるエネルギーを数値化したもので、一つの地震についてただ一つの値が定まる。1923年の関東地震ならM7.9、2011年の東北地方太平洋沖地震ならM9.0というように、地震を「固有の出来事」として記述するための数字である。

一方、震度は特定の観測地点における揺れの強さを示す。同じ地震であっても、震源に近い場所では大きな揺れが記録され、遠ざかるほど小さくなる。東日本大震災では宮城県栗原市で震度7が観測されたが、東京で記録された震度は5強前後だった。震源から遠ければ、マグニチュードがいかに大きくても震度は低くなる。

気象庁はこの関係を電球にたとえている。電球の明るさを示す値がマグニチュード、電球から離れたある場所の明るさが震度だ。電球自体の明るさが変わらなくても、近ければ眩しく、遠ければ暗く感じるように、震源が近ければ震度は大きく、遠ければ小さくなる。

マグニチュードはなぜ「対数」なのか

マグニチュードの尺度には、直感に反する特徴がある。数値が1増えるとエネルギーは約32倍になり、2増えると約1000倍になる。これは長さや重さのように線形に増える量ではなく、対数スケールを使っているためだ。

そのため、M8の地震とM6の地震のエネルギー差は2倍ではなく、約1000倍ある。わずかな数字の差が、実際には桁違いの規模を意味している。

マグニチュードが1935年にアメリカの地震学者チャールズ・リヒターによって考案されたのも、この発想からだった。着想の源になったのは日本の地震学者・和達清夫が1931年に作成した、最大震度と震央からの距離を書き込んだ地図だ。リヒターはその方法を発展させ、震源から100キロメートルの地点に置いた標準地震計の最大振幅の対数として定義した。欧米では今も「リヒター・スケール」という呼び方が残っているのはそのためだ。

気象庁マグニチュードとモーメントマグニチュード

現在、マグニチュードには複数の種類がある。日本のニュースで用いられるのは主に「気象庁マグニチュード(Mj)」だが、国際的な地震学研究では「モーメントマグニチュード(Mw)」が標準とされつつある。

気象庁マグニチュードは地震計で記録された波形の振幅から素早く計算できる利点があるが、規模の大きな地震では実際のエネルギーを過小評価しやすい「頭打ち」の問題が生じる。

これに対してモーメントマグニチュードは、断層が動いた面積・ずれた量・岩石の硬さという物理的な量から算出するため、巨大地震に対しても正確に機能する。東日本大震災の際、速報ではM7.9と発表されたが、その後の詳細な解析でMw9.0と訂正されたのはこの違いによる。

震度という概念の変遷

震度の歴史も、単純ではない。

明治時代から用いられてきた震度は、長らく「体感」と「被害の程度」によって人間が判定するものだった。気象台の職員が実際に揺れを感じ、周囲の状況を観察して震度を決める仕組みだ。この方法では主観的なばらつきが避けられず、震度5と6の地域で被害の差が大きくても正確に区別できないという限界があった。

転機になったのが1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)だ。震度7の判定に気象庁の調査班による実地確認が必要だったため、発表に時間がかかった。翌1996年4月、気象庁は体感による観測を全廃し、計測震度計による自動観測に完全移行した。同時に、震度5と6にそれぞれ「弱」と「強」が設けられ、現在の10階級体系が成立した。

震度0から震度7まで10段階(震度5弱・5強・6弱・6強を含む)というのは、この改訂によって生まれたものだ。よく耳にする「震度8は存在するのか」という疑問に対しては、気象庁は震度7を最大と定めており、震度8は定義されていない。

同じマグニチュードでも震度が異なる理由

マグニチュードと震度の関係は、震源からの距離だけでは説明がつかない。

地盤の性質が大きく影響する。砂礫や埋立地などの軟弱な地盤では地震波が増幅されやすく、固い岩盤の上よりも震度が高くなる傾向がある。また震源の深さも重要で、浅い地震は同じマグニチュードでも地表への影響が大きい。さらに断層のずれ方や地震波の伝わり方の偏りによって、震源からの距離が同じでも揺れの強さが異なることがある。

こうした要因が重なるため、M6台の浅い地震が直下で起きれば震度6を超えることもあれば、M9の巨大地震でも遠方では体感できない場合もある。「マグニチュードが大きければ震度も大きい」という想定は、距離と地盤の条件次第で大きく外れる。

二つの尺度が問いかけること

マグニチュードと震度は、地震という現象の異なる側面を切り取っている。

マグニチュードは地震そのものの規模を記述するための数字であり、時間や場所を超えた比較を可能にする。「1960年のチリ地震はM9.5」という記述は、時代も場所も異なる地震を同じ尺度で語ることができる。

一方、震度は「この場所で何が起きたか」を示す数字だ。建物が倒れたか、人が立っていられたか——防災の観点からはこちらが現実に直結する。同じ地震でも場所によって異なり、時代によって観測方法も変わる。

一つの地震に対してひとつだけ存在するマグニチュードと、観測地点の数だけ存在する震度。地震速報の中に並ぶ二つの数字は、それぞれがまったく異なる問いへの答えだ。

参考・出典

  • 気象庁「震度・マグニチュード・地震情報について」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq27.html
  • 気象庁「震度について」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/shindo/index.html
  • Wikipedia「マグニチュード」 https://ja.wikipedia.org/wiki/マグニチュード
  • Wikipedia「気象庁震度階級」 https://ja.wikipedia.org/wiki/気象庁震度階級
  • Wikipedia「ローカル・マグニチュード」 https://ja.wikipedia.org/wiki/ローカル・マグニチュード
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