砂漠とは何か——「乾き」の定義と、進む砂漠化の構造

科学

砂漠といえば、どこまでも砂丘が続く灼熱の大地を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。サハラ砂漠のイメージは強烈で、「砂漠=砂と熱」という印象を根づかせてきました。しかし、砂漠の定義はそれとは少々異なります。そして、その定義を正確にたどっていくと、砂漠というものがはるかに広い概念であることが見えてきます。

砂漠の定義——砂は必須ではない

砂漠は気候学上、「年間降水量が概ね250mm以下の地域」、あるいは「降水量よりも蒸発量が多い地域」として定義されます。注目すべきは、砂の有無はこの定義に含まれていない点です。

砂漠にはさまざまな種類があります。見渡す限り砂丘が広がる「砂砂漠」はそのうちの一つに過ぎず、岩盤が露出した「岩石砂漠」、砂利状の礫で覆われた「礫砂漠」、そして氷や雪に覆われた「極地砂漠」なども、定義の上では等しく砂漠に分類されます。

この定義に照らすと、意外な場所が砂漠として浮かび上がってきます。南極大陸です。南極大陸の年間降水量は平均して100mm未満であり、砂漠の定義を十分に満たしています。その面積は約1,382万平方キロメートルと、一般にサハラ砂漠(約910万平方キロメートル)を大きく上回ります。世界最大の「砂漠」は、灼熱のアフリカではなく、極寒の南極大陸ということになります。

こうした事実は、砂漠というものが「砂」ではなく「乾燥」の概念であることを端的に示しています。

砂漠はなぜできるのか——形成の仕組み

砂漠が生まれるには、大気の循環や地理的条件が深く関わっています。

赤道付近で暖められた空気は上昇し、雨を降らせながら乾燥します。この乾燥した空気は北緯・南緯20〜30度付近で下降し、地表を乾かします。この「亜熱帯高圧帯」の影響がサハラ砂漠やアラビア砂漠を生んだ主な要因の一つです。

また、大陸の内部は海から遠く、水蒸気が届きにくいために乾燥が進みます。中央アジアのゴビ砂漠がその典型です。海岸沿いであっても、寒流が流れる地域では空気が冷やされて安定し、上昇気流が生じないため雨が降りません。南米のアタカマ砂漠やアフリカ南西部のナミブ砂漠は、この寒流の影響を受けた砂漠です。

山脈の風下側に乾燥した地帯が形成される「雨陰効果」も、砂漠の成因として知られています。

このように、砂漠は一つの原因で生まれるわけではなく、気圧配置・地形・海流など複数の要因が組み合わさって形成されます。

砂漠化とは何か——「もともとの砂漠」との違い

砂漠の「定義」を整理したところで、もう一つの大きなテーマへ移ります。それが「砂漠化」です。

砂漠化は、砂漠そのものとは異なります。1994年に採択された国連砂漠化対処条約では、砂漠化を「乾燥地域、半乾燥地域及び乾燥半湿潤地域における種々の要因(気候の変動及び人間活動を含む。)による土地の劣化」と定義しています。つまり砂漠化とは、もともとは植生があり生産力を持っていた土地が、劣化して砂漠のような状態へと変化していくプロセスです。

重要なのは、砂漠化の定義が「極乾燥地域(砂漠そのもの)」を対象外としている点です。もともと砂漠だった土地は、砂漠化の問題には含まれません。砂漠化とは、緑や農地だった場所が失われていくことへの問題意識から生まれた概念です。

砂漠化の原因——気候と人間活動の悪循環

環境省の資料によると、砂漠化の原因は大きく「気候的要因」と「人為的要因」の二つに分けられます。

気候的要因は、地球規模での気候変動や干ばつ・乾燥化です。地球温暖化にともない乾燥地の面積はさらに拡大すると予測されており、ある研究では今世紀末までに乾燥地が現在より7%ほど増える可能性があると試算されています。

人為的要因としては、農地の過剰な開墾、過放牧、薪炭材の過剰採取、不適切な灌漑による塩類集積などが挙げられます。灌漑用水の蒸発によって地表に塩分が蓄積する「塩類化」は、かつて緑豊かだった農地を不毛の土地へと変えていく典型的なメカニズムです。

鳥取大学乾燥地研究センターによれば、砂漠化の背景には当該地域の人口増加と貧困という社会・経済的な要因が存在します。土地に圧力をかけ続けざるを得ない人々の生活状況と、劣化した土地がさらに貧困を深めるという悪循環が、砂漠化を加速させています。

この二つの要因は互いに影響し合い、悪循環を形成します。植生が失われると土壌が乾燥しやすくなり、さらに乾燥化が進む。そこへ人間活動が重なると、回復の難しい深刻な土地劣化へとつながっていきます。

砂漠化が進む地域——サヘルの事例

砂漠化が最も深刻な地域の一つが、アフリカのサヘルです。サヘルとはアラビア語で「岸辺」を意味し、サハラ砂漠の南縁に沿って東西に広がる半乾燥地帯です。セネガルからスーダンにかけて帯状に続く、幅200〜400キロメートルほどの地域を指します。

かつて「緑の岸辺」とも呼ばれたこの地域では、1960〜70年代の大干ばつ以降、深刻な土地劣化が続いています。植民地時代に定着した換金作物の単一栽培、急激な人口増加、過放牧——これらが重なり、土地の回復力を上回る形で劣化が進んできました。農地の約80%が荒廃しているという報告もあります。

この状況を食い止めようとする試みが、アフリカ連合が2007年に開始した「グレート・グリーン・ウォール(緑の長城)」プロジェクトです。サハラ砂漠南縁の11カ国にわたって、東西6,000〜8,000キロメートルの植林帯を整備するという壮大な計画で、土地の再生と食料安全保障、雇用創出を同時に目指しています。植林には気候条件が厳しい地域でも育つアカシア科の樹木が多く用いられています。

定義から見えてくること

砂漠と砂漠化は、似たような語感を持ちながら、指し示すものが異なります。砂漠は「乾燥という状態」であり、砂漠化は「状態への変化とその過程」です。

南極が砂漠であるという事実は、私たちの視覚的な先入観を崩します。一方、肥沃だった土地が少しずつ砂漠へと変わっていく砂漠化は、気候変動と人間活動が絡み合う現代的な問題です。世界の乾燥地には現在も約20億人以上が暮らしており、砂漠化はその人々の生活基盤を直接脅かしています。

「砂漠」という言葉が、砂の有無ではなく水の有無を問う概念であることを押さえると、砂漠化という問題の輪郭もより明確に見えてきます。

参考・出典

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