工学

科学

原子時計はなぜそんなに正確なのか——地球の自転をやめ、原子の振動に「1秒」を預けるまで

いまの「1秒」は地球の自転ではなく、セシウム原子が約92億回振動する時間で定められています。原子時計が桁外れに正確なのは、原子の振動には個体差も経年変化もないから。レーザーで原子を冷やすセシウム原子泉時計、光で刻む光格子時計、そして原子核を使う次世代時計まで、「1秒」を地球から原子へ、さらにその先へ預けてきた歩みと、その正確さがGPSや通信を支えるしくみをたどります。
技術

なぜ橋は落ちないのか——圧縮と引張を振り分ける、力の通り道の設計

橋が落ちないのは、材料が頑丈だからというより、力をどこへ流すかが設計されているからです。押す力(圧縮)と引く力(引張)をどう振り分けるか——アーチ、トラス、ケーブルという形の違いはここから生まれます。明石海峡大橋の1メートルの来歴から、開通4か月で崩れ落ちたタコマ橋の教訓まで、橋が立っている理由をたどります。
技術

GPSはなぜ「ずれる」のか——わざと狂わせて打ち上げる、衛星の原子時計

スマートフォンが当たり前に現在地を示す裏側で、GPS衛星の原子時計は打ち上げ前からわざとずらして設定されています。速く動く時計は遅れ、重力の弱い上空では速く進む——特殊・一般相対性理論の二つの効果が逆向きに働き、差し引き1日およそ38マイクロ秒。補正しなければ位置は1日で約10kmもずれてしまう、日常に隠れた相対論の話。
科学

大気圏再突入はなぜ難しいのか——摩擦で燃えるのでも、浅い角度で弾むのでもなく

宇宙から帰る船が炎をまとう理由は、空気との摩擦ではなく、機体前方で圧縮された空気の熱にある。「角度が浅いと弾かれる」もまた誤解だ。失う運動エネルギーの99%は経路の空気を熱し、機体が浴びるのは1%ほど。鈍頭・アブレーター・揚力——再突入の物理と工夫をたどる。
科学

燃料電池と電池は何が違うのか——「ためる」電池と、燃料を「もらい続ける」発電装置

「燃料電池」は充電できない電池で、燃やさない燃料を使う。名前が二重に奇妙なこの装置の正体は、反応する物質を中に抱えた普通の電池と違い、燃料を外から受け取り続ける「開いた発電装置」にある。1839年に弁護士が見つけ、アポロでは飛行士が副産物の水を飲み、いまは家庭のエネファームで湯まで沸かしている。
科学

音速の壁はなぜ「壁」だったのか——たとえが生んだ言葉と、遷音速の三つの難所

「音速の壁」は実在の壁ではなく、ある空力学者の言いまわしが新聞で誇張されて広まった言葉だった。けれど遷音速では衝撃波で抵抗が急増し、舵が効かなくなる——挑んだパイロットは実際に命を落としている。1947年にX-1がそれを越えた経緯と、強力なエンジンより地味な「動く尾翼」が鍵だった話をたどる。